ワカメチワワの司法試験ブログ

予備ルートからの合格者のチワワが受験生時代の遺産を残していきます

憲法29条3項違反の違憲主張

今年の予備試験の憲法の問題をチラ見しましたが,きっと多くの受験生は「憲法29条3項違反」を理由とした法令違憲の主張を書かなかったのではないでしょうか?

 多くの受験生は,予備校教育の弊害(?)もあって,「損失補償は,法に規定がなかったとしても憲法29条3項による直接請求ができる。だから29条3項違反による違憲の問題は生じない!」と考えたのではないかと思います。

 しかし,憲法29条3項に基づく直接請求を認めたとされる最大判昭和43年11月27日の判旨は,次のようなものです。

 

「同令(河川附近地制限令)四条二号による制限について同条に損失補償に関する規定がないからといつて、同条があらゆる場合について一切の損失補償を全く否定する趣旨とまでは解されず、本件被告人も、その損失を具体的に主張立証して、別途、直接憲法二九条三項を根拠にして、補償請求をする余地が全くないわけではないから、単に一般的な場合について、当然に受忍すべきものとされる制限を定めた同令四条二号およびこの制限違反について罰則を定めた同令一〇条の各規定を直ちに違憲無効の規定と解すべきではない。」

 

この判旨を読んでみると,仮に一切の損失補償を否定する趣旨と解されるような場合には,特別の犠牲を課すような規定は29条3項違反により違憲無効となる可能性があるとも読めますね。

仮に財産権規制立法を行う立法者が損失補償を一切しないという意思であった場合にまで29条3項に基づく直接請求を肯定してしまうと,一切の損失補償を否定しようとした立法者の意思に反する結果となってしまいます。そのため,このような場合(=財産権規制立法が一切の損失補償を否定する趣旨と解される場合)には,裁判所としては,29条3項違反を理由として財産権規制立法を違憲無効とした上で,立法者に対して,損失補償規定を新設してでも再規制するのか,はたまた補償を要するのであれば規制を諦めるかの選択をさせるべきことになります。

あまり知られていなかったのかもしれませんが,このように昭和43年最判は,憲法29条3項違反を理由とした違憲主張の余地もにおわせている判示となっています。大法廷判決なのですから,受験生としてはしっかりと判旨まで読んで理解しておくべきところでしたが,なかなかそこまでは手が回らないというのが実情でしょうか。

 

このブログでは,そうした「受験生の手が回らないところ」にもスポットライトを当てて解説していくことができればいいなと考えています。