強盗罪と「暴行又は脅迫」
1 はじめに
はじめまして,予備ルートを経由して司法試験に合格し,現在弁護士っぽいことをしているワカメチワワです。ブログは初めてですが,徐々に慣れていくつもりですのでよろしくお願いします。
弁護士業の合間に息抜きをしようと思い,自分自身のリハビリも兼ねてゆる~く始めてみます。なるべく役に立つ情報をお伝えできればと思いますが,基本的には自己満的な内容になります。
2 1項強盗における「暴行又は脅迫」
さて,初回は刑法の強盗罪についてです。
刑法の論文式試験では,構成要件の定義をしっかりと記憶しておくことが不可欠となるのは言うまでもありません。
ところが,強盗罪(刑法236条1項)の「暴行又は脅迫」の定義について,受験生の多くは不十分な定義を記憶してしまっているのではないでしょうか。
多くの受験生が覚えている定義の内容は次のようなものです。
- 強盗罪における「暴行」とは,被害者の反抗を抑圧するに足りる程度の不法な有形力の行使をいう。
しかし,これでは不十分です。強盗罪は暴行・脅迫を手段として財物を奪取する類型の犯罪なので,強盗罪における暴行・脅迫というのは,あくまでも財物奪取のための手段でなければなりません。ですので,強盗罪における「暴行又は脅迫」は,それが財物奪取に向けられたものであることまで必要になります。
3 2項強盗における「暴行又は脅迫」
上記とパラレルに考えると,2項強盗罪との関係においても,「暴行又は脅迫」は,財産上の利益に向けられたものであることが必要になります。そして,財産上の利益に向けられた暴行といえるためには,直接的,具体的かつ確実な財産上の利益に向けられたものであることを要すると解されています。
注意しなければならないのは,この問題は「財産上不法の利益」を得たかどうかという「結果」レベルの問題ではなく,あくまでも実行行為性レベルの問題であるという点です。例えば,相続目的で配偶者を殺害したような場合に,「暴行には当たるが財産上不法の利益を得ていない」という構成に立ってしまうと,実行行為はあるが結果不発生だということになって強盗殺人罪が成立することになってしまいまが,それはおかしいでしょう。あくまでも「暴行」の存在を否定して強盗に関する罪そのものの成立を否定していくべきでしょうから,財産上の利益に向けられた暴行に当たらないことを理由に「暴行」に当たらないと考えていくべきでしょう。
強盗罪は司法試験でも頻出の罪名ですが,「暴行又は脅迫」の意義について改めて考えていただけるきっかけとなれば幸いです。
仕事の合間を縫ってワカメチワワのアイコン画像も描いていきます。