ワカメチワワの司法試験ブログ

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司法試験平成25年度第1問(民法)設問1

1 事案の概要

司法試験の平成25年度民法の設問1は,保証債務履行請求について問われた問題で,その請求原因を丁寧に検討していくべき問題でした。出題当時においては,主に「書面」(446条2項)の要件を特に丁寧に検討することが求められていました。

もっとも,令和2年4月1日施行の改正民法の下では,他にも論じるべきことがあります。

 事案を簡単に振り返ってみると,

  • AB間で甲土地を目的とする売買契約が締結されるとともに
  • Cを保証人,AB間の売買契約に基づく代金支払債務を主債務とする保証契約を,主債務者BがCを代理して契約を締結し(Cからの代理権の授与なし)
  • その後,Cが,Bの行った保証契約を追認する

という事案でした。

 2 利益相反行為の検討

この場合,代理人Bにとっては人的担保を得られる利益があるのに対し,本人Cは保証債務を負担することになる点で,「代理人と本人との利益が相反する行為」(108条2項本文)に当たることとなります。そのため,Bの行為は,原則として無権代理とみなされることになります。

*なお,「利益が相反する行為」に当たるかどうかについては,826条1項の場合と同様に,行為の外形から客観的に判断されることとなると考えられます。

もっとも,Cは事後的に追認していることから,利益相反行為の点の瑕疵についても追認により治癒されるのではないかが問題となります。ここでは,108条2項ただし書が,「本人があらかじめ許諾した行為」については無権代理とはみなさない旨規定しているため,同項は事後の追認を許さない趣旨なのではないかが問題となります。

 この点については,以下の2点から,追認は可能であると考えることができるでしょう。

  • 108条2項は,その効果として「代理権を有しないものがした行為とみなす」と規定しているのに対し,113条1項は「代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約」の存在すなわち無権代理であることを前提としており,両者が問題となるレベルは異なる。
  • 108条2項の趣旨は本人の利益保護の点にあるのであって,本人が事後的に追認をすることでその効果を欲することを禁じる理由はない。

 

追認の可否という点を論じるかどうかは措くとしても,改正後の民法の下では,本問において108条2項本文の適用があることについても,しっかりと言及をしていく必要があるものと考えられます。