ワカメチワワの司法試験ブログ

予備ルートからの合格者のチワワが受験生時代の遺産を残していきます

選択科目の選択について

選択科目について結構悩まれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。いくつか私の関与してきた法分野について。私の独断と偏見が混ざっていますがつらつらと書き連ねてまいりますので,何らかの参考にしていただけたら幸いです。

なお,私は倒産法選択ですが,倒産法のことはとうの昔に忘れています。

 

① 国際私法

難 易 度:普通

分  量:少ない

基 本 書:松岡博『国際関係私法入門』(第3版,有斐閣

演 習 書:『演習国際私法CASE30』(有斐閣

受験者数:やや多い

お勧め度:★★★

【コメント】

家族法分野と財産法分野からの出題。家族法分野は,日本民法家族法の条文まで引かされることも多い。

論述の手順が概ね決まっていて,考え方さえ理解できれば非常に楽しい

・主に,①準拠法選択(事案の解決にどの国の法を用いるかの判断)②国際裁判管轄(日本の裁判所に管轄が認められるか,ないし外国裁判所の裁判が日本で効力を有するか)が主軸。国際取引法分野について問われることもある(国際物品売買に関する国際連合条約,インコタームズ,モントリオール条約など)

・メインとして引くことになるのは,法の適用に関する通則法と,民事訴訟法のうち国際裁判管轄の部分(3条の2~)や118条など

・条文数が他科目に比べて圧倒的に少ないのも特徴

・普通に実務をやっていても国際私法が関係してくることがあるので,何気に役立つ(企業法務でも一般民事でも)

・近年は,予備試験合格者による選択が多くて受験者のレベルが上がってきているためか,難化傾向にある気はする。ただ,考え方がしっかりと身についていれば,知らない問題が出てきても周りに差をつけることができて上位層に食い込むこともできる科目。

② 経済法

難易度:やや難

分量:少ない

基本書:入門書として『ベーシック経済法』(有斐閣

演習書:『論点解析 経済法』(商事法務)

受験者数:やや多い

お勧め度:★★☆

【コメント】

独禁法からの出題がほとんどのはず。

・国際私法と並んで,あるいは国際私法以上に,分量が少ない。考え方に特殊な部分が多いので,苦手な人は本当に苦手。ただ,慣れてしまえばなんてことはない。刑法っぽい思考枠組みかなという印象はあります。

・条文数も少なく,負担は少ない。

・真偽のほどは分からないが,特捜に行きたい人は経済法選択だと良いらしい。

・演習書や予備校講座は充実しておらず,勉強がしにくい部分はあるかも。ただし,上掲の演習書も出されており,従来に比べれば勉強しやすくなったのでは。

・弁護士実務の上でも独禁法関係の事項の検討を要求されることは多々ある。

③ 租税法

難 易 度:普通

分  量:普通

基 本 書:入門→金子宏『租税入門』(有斐閣新書)

本格的な学習→佐藤英明『スタンダード所得税法』,『スタンダード法人税法』(弘文堂)

演 習 書:『租税法演習ノート』(弘文堂)

受験者数:普通

お勧め度:★★☆

【コメント】

・主に所得税法から出題され,法人税法国税通則法の理解を問う設問もあり。判例の正確な理解があれば十分に合格点に到達する科目。

・会計士の先生は,公認会計士試験で租税法を使うこともあり,選択される方が多いイメージ。

・最初はとっつきにくいかもしれないが,考え方に慣れれば楽しくて仕方がないはず。

・難点は,普段用いるであろう六法に所得税法法人税法国税通則法が載っていないということ。別途『租税判例六法』等を購入する必要がある。

・自分の確定申告のときには当然役立つし,税務が関係してくる事件を扱うときにもついでにアドバイスできるのは良い。

・法改正が多くて追いかけるのはつらい(試験との関係ではそんなに法改正に影響することはほとんどない)。特に,税務を専門にやろうと思ったら,毎年法改正をしっかりと追いかけないと,莫大な額の損失をクライアントに与えてしまうこともあり得るところです。専門にするならそれなりの気概が必要。

・私個人は税務案件の意見書を求められることもあり,法理論としてはものすごく興味深い分野。私は一番好きです。

④ 知的財産法

難 易 度:やや難

分  量:多い

基 本 書:特許法高林龍『標準特許法』(有斐閣

 著作権法→『著作権法入門』(有斐閣

※高林先生の本は人気ですし良書なのでしょうが,個人的にはもっと整理して分かりやすく書いて欲しいという気持ちがありました。理論的な整理が伝わりにくい印象です。

※リーガルクエストもありますが,読んだことはないです。

※個人的には特許法に関しては中山信弘先生の『特許法』(弘文堂)が好きですが,受験生には分厚いかも

茶園成樹先生の『特許法』『著作権法』(いずれも有斐閣)もあります(私は読んだことがないです)。他の知財分野の本では茶園先生の本が非常に分かりやすく,分量も多くないので,おそらく特許法著作権法についても期待を裏切らないはず。

演 習 書:『知的財産法演習ノート』(弘文堂),『論点解析知的財産法』(商事法務)

※論点解析は,当てはめの一応の方向性が示されていたり,別々の論点であると認識されがちな複数の問題点をより高次の考え方から統一的に説明することが試みられている点は非常に有用。ただし,考え方に独特な部分もあるため,好みは分かれ得る。

受験者数:やや多い

お勧め度:★☆☆

【コメント】

特許法(第1問)著作権法(第2問)からの出題。分量がかなり多い。

特許法は司法試験との関係における法律論としてはそこまで難しくはない(逆に,実務に出たら,文系は発狂するレベル。私だけかもしれませんけど。)。他方で,著作権法は,最高裁レベルの判断が必ずしも多くない分野であって,下級審レベルで見解が割れている部分も少なからずあること,さらには近年の司法試験の問題が要求するレベル(≠合格レベル)が相当に高く,4頁で纏め上げるというのはなかなかに困難

・これまで複数の法改正がなされているので,過去問が使いにくい部分がある。

知財高裁判例からの出題があるが,司法試験の出題後に最高裁で当該知財高裁の判断が破棄されることもあって,過去問が使いにくい部分がある

かなりの量の下級審裁判例(百選に載っていないものも含む)があるが,それらを踏まえて論述することが求められることも多い

・演習書や予備校の講義も必ずしも充実しているとは言えない。

弁理士資格を持っている人や,将来どうしても知財業務に携わりたいという人向けという印象。ただし,著作権分野の案件はどこに行っても比較的多いはずで,文系でも当然に対応できる分野。また,司法試験科目ではないものの,商標分野の案件にも多く直面するはずなので,知財に関する一応の知見は持っておいても損はないはず。実務に出れば,条約レベルの話にも対応できるようにしておかなければならない場合もある。

⑤ 倒産法

難 易 度:やや難

分  量:やや多い

基 本 書:藤田広美『破産・再生』(弘文堂),松下淳一『民事再生法入門』(有斐閣

演 習 書:『倒産法演習ノート-倒産法を楽しむ22問』(弘文堂)

受験者数:多い

お勧め度:★★★

【コメント】

破産法(第1問)民事再生法(第2問)からの出題。民事系,特に民法のうち担保物権分野あたりが得意であれば,倒産法も得意になれる気がする。手続法としての側面が大きいので,民事訴訟法の理解も不可欠。

民事再生法の理解は破産法の理解を土台に組み立てていくので,そこまで分量が多いわけではない

・企業法務に携わるようになれば,倒産リスクの回避という観点から各種スキームを検討したりするので解釈論も必須でしょうが,街弁的に申立業務や管財業務をする場合には,解釈論まで要求されることは少ないかも。いずれにせよ,体系的に倒産法について理解できていることは,どこかしらで大きな強みになるし,試験との関係でいけば倒産法のべ強が民事系の理解に結びつくことも。

・司法試験の問題は一時期難化傾向にありましたが,ここ2年くらいはそこまで難しい問題という印象ではない気がする。

 

⑥ 労働法

言わずもがな,受験者の多くが選択する科目。しかし,私は司法試験の労働法は詳しくないのです…。BEXAの加藤喬先生やアガルートの渡辺先生の講義を取っていればきっと大丈夫です。笑

⑦ 環境法

詳しくないのです…。

⑧ 国際公法

詳しくないのです……。