ワカメチワワの司法試験ブログ

予備ルートからの合格者のチワワが受験生時代の遺産を残していきます

解除に関する諸問題

 解除については,債権法改正でも大きく議論されたところでもあり,多くの問題点があるところです。気にしないと気にならないいくつかの点に触れていきたいと思います。

1 債務者の帰責性要件の要否

 債務不履行解除をするために,現行民法では債務者の帰責性が必要とされて(解されて)います。しかし,改正後の民法によれば,債務者の帰責性がなかったとしても,解除が可能となります。解除制度は,あくまでも債務者の責任追及の手段ではなく,契約の拘束力から債権者を解放させるための手段だからです。

 現行法のもとにおいては,543条は明確に債務者の帰責性を解除のための要件(正確には履行不能が不可抗力によるものであることを主張立証することで解除の主張を妨げることができる)と位置付けているのに対し,541条は債務者の帰責性要件を課してはいません。現行法のもとにおいても,改正法を見据えれば,帰責性は不要と解することもできるかと考えられます(現にそのような見解も有力かと思われます)。

 こうして改正民法に言及すると,改正民法の解説でもしたい気分になりますね。

2 545条1項ただし書の適用要件

 545条1項ただし書については,その法的性質もあわせて様々な問題をはらんでいるところです。「第三者」の意義については皆さんおさえているとおりだと思いますが,「第三者」として保護されるための要件として,権利保護要件説と対抗要件説とが対立しています。私個人としては(基本的には)対抗要件説に依るのですが,受験生のほとんどは権利保護要件説で書くのだと思いますので,権利保護要件説から生じる問題についてです。

 第三者が不動産に関する所有権を解除前に取得しようとしたという場合には,権利保護要件として登記具備を要すると解されています。それでは,動産の場合はどうでしょうか?

 定説はないのでしょうが,ここはおそらく即時取得の場合の「占有を始めた」要件と似たように考えるべきところかと思います。すなわち,何ら帰責性のない解除権者の犠牲の下で第三者を保護すべきなのですから,解除権者を犠牲にしてもよいほどの保護要件を備えていなければならないはずです。そのため,権利保護要件説からは,占有改定のような観念的な引渡しでは足りず,現実の引渡し等の解除権者を犠牲にしてもよい程度の占有を取得している必要があると考えられます。

 よくよく考えると難しい問題ですし,権利保護要件の何たるかを深く考えていくと,受験界一般で出回っている旧司法試験平成20年度第1問の設問1の答案例は間違っている気がしてならないのは独り言にとどめておきます。

 

 そういえばまだ刑事訴訟法行政法について記事を書いていませんので,そろそろこの両科目にも手を出していきます。