ワカメチワワの司法試験ブログ

予備ルートからの合格者のチワワが受験生時代の遺産を残していきます

司法試験平成25年度第1問(民法)設問3

今回は,司法試験の平成25年度民法設問3についてです(改正民法は特に関係ありません)。 1 事案の概要 設問3は,物上代位と相殺に関する問題について,最判平成13年3月13日民集55巻2号363頁(以下,「平成13年最判」といいます。)の射程を問うもので…

司法試験平成25年度第1問(民法)設問1

1 事案の概要 司法試験の平成25年度民法の設問1は,保証債務履行請求について問われた問題で,その請求原因を丁寧に検討していくべき問題でした。出題当時においては,主に「書面」(446条2項)の要件を特に丁寧に検討することが求められていました…

抵当権に基づく妨害排除請求

【設例】 Aは,Bに対して5000万円を融資するにあたり,Bの所有する甲土地について抵当権の設定を受け,その旨の抵当権設定登記手続を完了した。甲土地上には,抵当権設定時から,石灯籠(甲土地の従物に当たるもの)が設置されていた。 その後,Bは…

賃料不払を理由とする賃貸借契約の解除

賃貸借契約において,賃料債務について不払がある場合であっても,信頼関係が破壊されていないような場合には,賃貸人は当然には賃貸借契約を解除することができないとされています(信頼関係破壊の法理)。これは,賃貸借契約が,当事者間の信頼関係を基礎…

改正民法567条2項の意義

1 総論 改正民法567条は,売買の目的物についての危険の移転について規定しています。 1項は,特定された目的物の引渡し後に,当事者双方の責めに帰することができない事由により滅失・損傷したときは,買主の履行追完請求,代金減額請求,損害賠償請求…

民法94条2項の類推適用

少し気になったので,久々の更新です・・・。 94条2項類推適用について論じる際に,多くの受験生が①虚偽の外観,②真の権利者の帰責性,③第三者の信頼という規範を立てるかと思います。 その際に,③第三者の信頼要件について,「意思外形非対応型の場合に…

選択科目の選択について

選択科目について結構悩まれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。いくつか私の関与してきた法分野について。私の独断と偏見が混ざっていますがつらつらと書き連ねてまいりますので,何らかの参考にしていただけたら幸いです。 なお,私は倒産法選択…

平成30年度刑事訴訟法〔設問1〕下線部②の適法性

久しぶりの更新です。ネタバレを含むので,平成30年度の予備試験問題はまだ考えたくないという方については,ご覧にならないでください。 1 所持品検査の適法性の判断枠組み さて,平成30年度の刑事訴訟法ですが,ようやく所持品検査の問題が出題されま…

物上代位と相殺(基本),相殺権の濫用

今回は事例問題形式にしたいと思います。 1 問題 Aが,Bに対して融資をする際に,Bの所有する建物(以下,「本件建物」という。)を目的として,抵当権の設定を受け,抵当権設定登記手続を完了した。本件建物は,Aが抵当権の設定を受ける以前から,Bが…

時効完成後の債務の承認と時効援用権の喪失

債権の消滅時効の完成後に,債務者が債務を承認した場合には,その債務者は,たとえ時効完成の事実を知らなかったとしても,もはや時効援用権を喪失するというのが最高裁判例(最判昭和41年4月20日民集20巻4号702頁)の立場ですね。 それでは,次…

刑法総論の体系の意識・詐欺罪の実行行為

刑法各論分野で学ぶ罪を検討する際に,多くの受験生は,刑法総論の体系を意識することなく漫然と要件を検討してしまっています。逆に,合格する受験生は,意識的であれば無意識的であれ,刑法総論の体系を念頭において検討する姿勢があらわれているところで…

裁判上の自白の効力

1 裁判上の自白の効力 裁判上の自白については,裁判所拘束力,証明不要効,撤回禁止効という各効力が生じることは,ほとんどの受験生がおさえているところかと思います。ところが,自白の撤回の可否が問われた時に,裁判上の自白の効力について答案上でい…

解除に関する諸問題

解除については,債権法改正でも大きく議論されたところでもあり,多くの問題点があるところです。気にしないと気にならないいくつかの点に触れていきたいと思います。 1 債務者の帰責性要件の要否 債務不履行解除をするために,現行民法では債務者の帰責性…

会社法423条1項に基づく損害賠償請求権の譲渡

ここ最近なんだか会社法だらけになってしまっている気がしますが,例によって考えてみましょう。 A社の取締役であるYの任務懈怠責任を追及するために,A社の株主Xが株主代表訴訟を提起しようとしているとします。この状況下において,A社は,A社がYに…

会社法361条1項の趣旨

会社法361条は,取締役の報酬について株主総会決議により決定する旨規定しています。この条文の趣旨について,多くの受験生がおさえている趣旨は不十分なのではないかと思います。 多くの受験生は,単に「お手盛り防止」とだけおさえているのでしょうが,…

遺産分割協議・相続放棄と詐害行為

少しは受験生の方々のお役に立とうという初心に帰り,詐害行為取消権と相続法との関係についてみてみたいと思います。 遺産分割協議が詐害行為になるとする判例がある一方,相続放棄が詐害行為とはならないとする判例があります。その違いをしっかりと説明で…

民事訴訟法5条9号の「不法行為があった地」

論文試験との関係ではほとんど関係ないと思われますが,不法行為に関する訴えについての管轄のお話です。 民訴法5条9号によれば,「不法行為に関する訴え」の管轄は,「不法行為があった地」にも認められるとされています。もっとも,ここでいう「不法行為…

敷金返還請求権の発生時期【頭の体操】

敷金返還請求権の発生時期については,民法を学習した受験生であれば誰でもおさえているところではないでしょうか。 最判昭和48年2月2日は,目的物の明渡し時に発生すると解しており,受験生の多くもこの見解で理解しているはずです。この,誰でも理解し…

不真正不作為犯の実行行為性

不真正不作為犯の実行行為性については,典型論点であるにもかかわらず多くの受験生が当てはめに窮しているところだと思います。 刑法上の作為義務が存在するかどうかを検討することになりますが,刑法上の作為義務を肯定する場合の基本的な当てはめの流れと…

民事訴訟における相殺の抗弁

相殺の抗弁についての判断については,理由中の判断であったとしても既判力が生じるとされている(114条2項)ことから,様々な場面で特殊な扱いを受けることがあるのは皆さんご承知のとおりだと思います。私自身は,訴訟において相殺の抗弁を主張したこ…

強制わいせつ罪と故意以外の主観的事情

最大判平成29年11月29日は,最判昭和45年1月29日を変更し,強制わいせつ罪の成立要件として故意以外の行為者の性的意図を一律に成立要件とすべきではないと判断しました。以下,判旨と雑感を連ねていきます。 1 判旨 「刑法176条にいうわいせ…

憲法29条3項違反の違憲主張

今年の予備試験の憲法の問題をチラ見しましたが,きっと多くの受験生は「憲法29条3項違反」を理由とした法令違憲の主張を書かなかったのではないでしょうか? 多くの受験生は,予備校教育の弊害(?)もあって,「損失補償は,法に規定がなかったとしても…

強盗罪と「暴行又は脅迫」

1 はじめに はじめまして,予備ルートを経由して司法試験に合格し,現在弁護士っぽいことをしているワカメチワワです。ブログは初めてですが,徐々に慣れていくつもりですのでよろしくお願いします。 弁護士業の合間に息抜きをしようと思い,自分自身のリハ…